東京大学大学総合教育研究センター主催「インタラクティブ・ティーチング」アカデミーに出席しました

東京大学大学総合教育研究センター主催「インタラクティブ・ティーチング」アカデミーに出席しました

2019.03.15
教育開発支援機構FD推進センターの教職員が、日本教育研究イノベーションセンター・東京大学大学総合教育研究センター主催の「インタラクティブ・ティーチング」アカデミーに、学生FD担当教員 川上忠重が出席しましたので報告いたします。

本アカデミーは、毎回異なったテーマのワークショップを行い、そこで得た学びを自身の授業に活かすことを目指し開催されています。

開催概要および参加報告を掲載しますので、是非ご覧ください。

【参加報告】
1)「インタラクティブティーチング」第2回「90分授業のデザイン」
東京大学 大学総合教育研究センター主催
日時:2018年04月22日(日)10:00〜16:00(1回目)
   2018年06月02日(日)10:00〜16:00(2回目)

概要:「学び」を深める授業実施に向けて、1つの授業デザイン・意義・方法を理解し、実際の授業を踏まえて、改善点を明確にし、他教員との情報共有やディスカッションを通して、学習を手助けする活動全般(インストラクション)のデザインについて検討するプログラムである。基本的な1つの授業の構成要素である、「導入、展開、まとめ」に関して、ガニェの9教授事象(授業設計理論の1つ:教員が学習者にできる働きかけ)を踏まえながら、デザインシート(経過時間、所要時間、構成、トピック、詳細、方法、発問・ワーク・留意点および使用資料等)を用いて作成した。
通常の授業においては、当然、各クラスでの授業構成はあらかじめ検討すべきことではあるが、特に9教授事象の「学習成果を評価する」部分の時間配分やポイントについては、授業担当者や科目等により著しい差異があり、あらためて個々の授業における「授業デザイン」の重要性が確認された。
今回は、2018年度から導入された100分授業での「授業デザイン」を実施することにより、90分授業から100分授業への移行に伴う担当授業での問題点や「新たな工夫」についても自己確認でき、有用な成果が実感された。

2)「インタラクティブティーチング」第3回「ルーブリック」
東京大学 大学総合教育研究センター主催
日時:2018年06月03日(日)09:00〜16:00(1回目)
   2018年08月03日(金)14:00〜17:00(2回目)
 
概要:学生に身につけさせたい能力の到達度に関する評価は、教授―学習の質改善において極めて重要であるが、本プログラムは、基本的な総括的評価(学生が到達した学習成果の測定)と形成的評価(学生の学習プロセスにおける改善を目的)の概要を理解した上で、評価の評価(実施しようとしている評価そのものが適切であるかどうかを評価)における4つの観点(信頼性、妥当性、客観性および効率性)について、作成したルーブリックを用いて、参加者による相互評価が行われた。今回は、FD推進センターから提供されているルーブリック評価を参考にし、担当するゼミに関するルーブリックを作成した。
定型化されたルーブリックも数多く散見されるが、実際の授業で用いたルーブリックをさらにブラッシュアップする段取りや、評価の観点や基準を可視化するルーブリックのメリットだけでなく、デメリット(ルーブリックに示された観点にのみ着目して課題に取り組んでしまい、学びの範囲が制限される)についても再確認することができた。特にゼミ活動においては、知識・理解だけでなく、批判的思考や創造的思考および問題解決能力も重要であり、理系・文系を問わず数多くの観点を整理することができた点は有益であった。また、
本年度の卒業ゼミ生の能力向上も本プログラムに基づくルーブリック実践で確認された点は、重要な成果の1つである。

3)「インタラクティブティーチング」第6回「コースデザイン(シラバス)」
東京大学 大学総合教育研究センター主催
日時:2018年11月11日(日)10:00〜17:00

概要:テキストシラバス(一般的なシラバス)については、「授業内容の紹介」的な役割は知られているが、今回のプログラムは、あらためて「学び」を促す授業をデザインするツールとしてとらえなおし、自分自身の授業の目的・目標を再確認し、グラフィックシラバス(セメスターを通じたコース全体の主要なトピックの連続性や構成を表現するフローチャートあるいはダイアグラム: Nilson 2007)を作成することにより、授業構成の原理や授業デザインの現状を再確認および改善するものである。
授業構成の原理は、知識構造の可視化が理論、実践を含めて重要であるが、「モチベーションの喚起・維持」を含めたグラフィックシラバスの活用は、実践すべき授業方法の1つである。
テキストシラバスについては、目的、目標の観点、目標の設定では、Bloomの教育目標分類(認知的領域、情意的領域および精神運動的領域)の観点からの改訂について、他参加者と意見交換を踏まえて行うことができ、現行のシラバスの不足部分も確認された。また、テキストシラバス改善演習では、バージニア工科大学で開発された「シラバスルーブリック」(授業が学習中心にデザインされているかを定量的・定性的に評価するために開発)も紹介され、ポイント評価によるシラバスチェックに関する情報を得ることができた。

 4)「インタラクティブティーチング」第7回「模擬授業クリニック」
東京大学 大学総合教育研究センター主催
日時:2019年03月02日(土)13:00〜18:00
   2019年03月03日(日)10:00〜18:00
               
概要:「学び」の促進に関わる「モチベーション」、「熟達」、「練習とフィードバック」を事前学習したうえで、5名の模擬授業が実施され(一人10分)、各模擬授業での改善点やデザインに関する検討および模擬授業の実施者へのフィードバック(コメントシートおよびグループワークまとめシート)が行われた。今回は、模擬授業の担当者となり、「内燃機関」に関する10分講義を、パワーポイントを用いて実施した。授業デザイン(導入、展開およびまとめ)に関しては、10分の時間内で概ね入れるべき内容を検討した。また、模擬授業では、「アクティブラーニングを授業内で実施する」が課題として入っており、グループワークによる実践を行った。
模擬授業実施者は、授業参観者の意見を踏まえて、授業構成やコンテンツを、翌朝までに再検討&再提出することになっており、今回のプログラムでは、一番厳しいところであったが、授業改善に向けた教員の「モチベーション」を確認することができた。
2日目は、全員の前で改善された模擬授業が実施され、それに関する再評価を再度全員でフィードバックシートを用いて、情報共有することにより、「FDとしての模擬授業」について考える機会となった。
10分程度の模擬授業でも、十分、実際の授業での「授業デザイン」、「評価」、「学びのモチベーション向上」および「実践からの第三者的評価の重要性」についての「実践知」を得ることができた。
今後、このような実践的「FDプログラム」が本学においても開催されることを期待する。

以上


 

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