教育開発支援機構FD推進センターの教職員が、大学コンソーシアム京都主催の「第23回FDフォーラム」に出席いたしましたので報告いたします。
大学設置基準によるFDの義務化から10年が経過し、各大学において「教育力」を高める取り組みが加速度的に広まってきました。今回のフォーラムでは、「これまでのFD」によって生まれた成果と課題を整理したうえで、「これからのFD」の展望や多種多様な大学教育の実現について検討する機会として、シンポジウムおよび分科会が行われました。
出席した各メンバーも、各々の観点から、感想や意見等を述べておりますので是非ご覧ください(下記参照)。
■ 開催概要
テーマ:
FDのこれまでと,これから〜多様な角度からFDについて考える〜
日 時:
2018年3月3日(土)13:00〜17:00 シンポジウム
[シンポジスト]
林 剛史氏(文部科学省 高等教育局大学振興課 課長補佐)
梅本 裕氏(学校法人京都橘学園 理事長)
森 朋子氏(関西大学 教育推進部 教授)
佐藤 浩章氏(大阪大学 全学教育推進機構 教育学習支援部 准教授)
2018年3月4日(日)10:00〜15:30 分科会
参加分科会:大学の「出口」とは何だろうか−教養・シチズンシップ・キャリア・人間教育/
ビジネスと学部ゼミ活動/体験・実践型学習におけるフィールドワークを通じた効果と
運営上の課題/PBLの組織的な運用・実践/学生ファシリテータ/スチューデント・
アシスタント協働型の授業と学び場づくり:実践事例と将来像/高次の能力を捉える
ための評価〜どのような評価がどのような能力を捉えることに適しているのかを課題づくりも含めて考える〜
【会 場】京都産業大学(公益財団法人 大学コンソーシアム京都主催)
■参加報告
・大野 達司(教育開発支援機構長)
初日はFD10年のこれまでと今後,ということで,「これまで」については本学の取り組みを再確認,位置づけができた。今後については,生徒の多様化と減少,新しいメディアとの兼ね合いで,検討すべき(すべきでない)問題の提示があり,参考になった。
二日目は,教養教育と市民性の寛容がテーマだった。批判的な市民としての社会人の育成というのは,賛成だがかなり古典的なものだと思う。それを今後どのように行って行くのかが難点だろう。各教員が多様な視点から情報と意見を伝えるだけでいいのか。これが可能なのはすでに学生が批判的市民の能力を獲得しているからではないのか。批判性を維持するために,教員がいわば胸襟を開いて,というような報告があったが,それは理想だけれども,大規模授業で可能にするにはどうしたら?学生の方が興味を持ってくれるような「人格」を各教員が持つのは(少なくとも私)無理ではないか。それをFDとして展開するにはどうしたらいいのか。そもそも大学は人格の交流をめざしたものだったかな,などなど,考えさせられる点が多かった。
・竹口 圭輔(FD推進センター長)
初日のシンポジウムは,これからのFDを考える上でたいへん示唆に富む内容だった。とりわけ,これまでのFDは教員側の視点から「教授・教育」を重視してきたが,今後はその受け手である学生側の視点から「学習」の質を向上させるべきであるという内容は印象に残った。
また,2日目の分科会「ビジネスと学部ゼミ活動」では,ふだんあまり共有することのないゼミ運営の工夫や苦労を全国各地の大学教員と情報交換することができた。さっそく私自身のゼミ運営にも反映していきたい。
・酒井 理(FD推進プロジェクト・メンバー)
学部のゼミで学生をフィールドに送り出して学ばせる体験・実践型学習をおこなっていることから,興味と関心があり「体験・実践型学習におけるフィールドワークを通じた効果と運営上の課題」というテーマの分科会に参加いたしました。京都産業大学現代社会学部,立命館大学政策科学部,京都精華大学デザイン学部それぞれの大学で取り組まれている授業に関して報告を聞きました。先駆的な取り組みとして報告された授業ではありましたが,各学部の中で,履修学生が10—20名に過ぎない1クラスという現状だとのことでした。各大学での授業運営のご苦労を知ることができたと同時に,体験型,実践型の授業の広がりは,想像以上に進んでいないことを知る機会となりました。私自身が実践型授業の経験が長いということもあり,報告からの新しい発見はありませんでしたが,分科会の最後に5−6人でのグループディスカッションの時間がありました。これは他大学の教員と情報交換する貴重な時間となりました。当該授業における学生の評価の問題,企業との関係維持の課題など,同様の取り組みにチャレンジしている他大学の教員の話も聞くことができ,授業を改善してく上で大いに参考になりました。
・佛坂 公子(学務部教育支援課長)
2003年秋の全学FD推進委員会発足から本学FD立ち上げ事務に携わった身にとって,本フォーラムのテーマ「FDのこれまでと,これから〜多様な角度からFDについて考える〜」は大変興味深いものでした。
特に1日目のシンポジウムでは,京都橘学園梅本裕理事長のご講演により義務化以前のFDを想起し,これまでのFDを総括するとともに,大阪大学佐藤浩章准教授の斬新な未来の大学教員像・FD像のご講演に刺激を受け,関西大学森朋子教授の学びの分析に焦点をあてた学習FDのご講演にFDと教学IRがコラボレーションしつつある日本の現状を改めて認識することができました。FDの概念が多様に広がっている現在,本学FD推進センターの今後の方向性を模索する上で示唆に富む内容でありました。
また,2日目は第9分科会「PBLの組織的な運用・実践」に参加し,多くの実践例を学ぶことができました。
本学のFD推進センターにおけるFDの定義には「教育および学びの質の向上を目的とした教員・職員・学生による組織的・継続的な取り組み」という文言が入っています。今後も職員のSDの一環としてこのような学習の機会を増やし,大学教育の質的向上に間接的にでも寄与できればと考えています。
・
(学務部教育支援課教育支援担当主任)
FD活動がマンネリ化しないよう各大学が試行錯誤していることを把握でき、今後のあるべき、やるべきFD活動の策定が一筋縄ではいかぬことを痛感した。フィールドワークをテーマにした分科会に参加したが、各大学の現状は、担当教員の熱意といった個々のファクタで制度維持していることが明らかであった。フィールドワークを全学的に取り組むには、学内の仕組み的にも費用的にもクリアすべき課題が多いことをグループワークで共有し、今後の情報交換の機会にもなり、 有意義な時間であった。
・堀内 剛(学務部教育支援課教育支援担当課員)
1日目のシンポジウムのパネリストの人選が文科省,大学理事長,第一線の教員とバランスのとれた構成であったため,テーマ通に沿った熱い議論が展開された。一方で現場との乖離,特に大規模授業に対する示唆が相対的に乏しかったことが残念であった。
2日目は第1分科会に参加したが,全て近隣大学という残念な班分けの結果であった。情報交換,問題意識の共有ができたと思うが,タイトなスケジュールの中で設立目的,規模の異なる大学間において一つの方向性を導き出すのには,難しい面があった。
総合的には,明日から役立てる知見を得ることができたことが収穫であった。
・客 梦璐(学務部教育支援課教育支援担当課員)
2つ日間のワークショップを通じて,学ぶことが多く,大変刺激になりました。
第5分科会「高次の能力を捉えるための評価 〜どのような評価がどのような能力を捉えることに適しているのかを課題づくりも含めて考える〜」に参加しました。難しいテーマでしたが,講演者の分かりやすい説明,そしてユーモアに富んだ事例紹介のおかげで,理解を深めることができました。最後のグループワークでは14グループに分かれ,実際にメディアリテラシーに関する課題およびループリックを作成し,発表・意見交換を行いました。機会があればぜひ参加したいと思います。
・石毛 満悠(学務部教育支援課教育支援担当課員)
第1分科会「学生ファシリテータ/スチューデント・アシスタント協働型の授業と学び場づくり:実践事例と将来像」では,京都産業大学での活動的な取組みを知ることができ刺激を受けました。学生と教職員間で授業やプログラムを創り上げていくことには多大な労力を要する一方で,やり終えた際には大きな達成感を得られることが,学生・教員・職員の方々の発表から強く感じられました。グループワークでは,全国から集まった他大学の教職員と共に,実際の一部分のプログラムを体験しました。自身が学生の立場となって考えることができたことは,新鮮であり非常に勉強になりました。