第11回FDフォーラム「これからの大学教育」(財団法人 大学コンソーシアム京都主催)

第11回FDフォーラム「これからの大学教育」(財団法人 大学コンソーシアム京都主催)

2006.05.19

第11回FDフォーラム「これからの大学教育」(財団法人 大学コンソーシアム京都主催)
第6分科会「大学におけるキャリア教育」に参加して

コミュニケーションプロジェクト・リーダー 大沢 暁 (国際文化学部教授)


大学コンソーシアム京都主催第11回FDフォーラム「これからの大学教育」に参加してまいりました。第1日目は、安西祐一郎慶応義塾長が『これからの時代の大学教育』という題目で、基調講演をなさいました。その後、『大学教育への期待』をテーマとしてシンポジウムが開催されました。FDの奥行きの広さを再認識させられ、興味深い意見を多々お聞きしました。基調講演とシンポジウムにつきましては、新田先生が報告されておられますので、繰り返しません。シンポジウムにおける発言のなかから、ひとつだけご紹介いたします。

 ・ 学生による授業評価について、みんながすばらしい授業を行えば、評価する方がつらくなる。そこまで行かないといけない。

たしか北川正恭早稲田大学大学院公共経営研究科教授(前三重県知事)のご発言であった、と記憶します。

第2日目は、第6分科会『大学におけるキャリア教育』に参加いたしました。かつて企業に勤められた経験がおありになり、現在学生のキャリア教育に携わっておられる三人の報告者が、企業が求める学生像、そして大学教職員が学生に発信できる支援について、お話くださいました。一人目の報告者は、就職ジャーナリストの岡本武史氏。リクルートにお勤めでしたが、長引く不況のなか、つぎつぎと部下の首を切っていった結果、部下のいなくなった自分の仕事もなくなり、最後に自分の首を切った。56歳で失職。フリーとなって後、現在の職に就かれただけあって、辛口でしたが、応用可能なアイデアに溢れたお話でした。二人目の発表者は、キャリアカウンセラーの山崎聡子氏。昨年度、龍谷大学理工学部において、キャリア・デザインの講座を担当されたご経験をふまえ、とても実践的な報告でした。最後の三人目は、京都ノートルダム女子大学学生部就職課に籍をおく濱中倫秀氏。女子学生を対象にしておられるせいか、感動的なエピソードをまじえたお話でした。お知らせしたいことが山ほどありますが、学生のキャリア教育を考えるうえで参考になると思える着想のなかからいくつか選んで、箇条書き風にご報告いたします。

・ 将来のキャリアを描くにあたり、必要なことは、自分の考えを持つこと。人生の目的は幸せになることであるから、幸せになるためのキャリア・デザインを描く。描いたキャリアを実現する方法のひとつとして仕事がある。仕事は自分を表現するための手段である。

・ 自分を最大限に活かすためには、どんなステージ(会社)に身をおいて、どんな役割を担うのか考える必要がある。普通の学生が一番になれるわけではない。みんながスポットライトを浴びるわけではないのだ。たとえていえば、普通の学生は懐中電灯。明るい光の中で灯しても、懐中電灯の光は目立たない 。しかし、停電になれば威力を発揮する。どう輝けるのか、それぞれ工夫することがたいせつだ。

・ コミュニケーション能力が高いということは誤解されている。それは「話がうまい」ことではない。相手のニーズをつかむこと、つまり、相手の話をよく聞くことである。ちなみに、企業は高度な専門知識を求めているわけではない。そんなもの、ニーズにあわなければ無価値である。

・ 仕事をするうえで必要な基礎力のうち、学生時代に身につけて欲しいのは、〈反応力〉と〈愛嬌力〉。反応力を身につけるため、質問の達人になってほしい。質問はわかってないとできないから。愛嬌力を身につけるため――愛嬌とは媚をうることではなく、周囲の人々に好ましいと思われることであるが、挨拶の達人になってほしい。挨拶は次のことばを出やすくする。また、相手が自分を覚えてくれるし、自分の味方になってくれる。

 ・ インターンシップについて、学生あるいは大学が自分のプラスになると考えてインターンシップに向かう発想はもう古い。インターンシップに出たら、お邪魔しに行くのではなく、積極的に先方のプラスになることをする気構えを持つべきだ。あの大学の学生がくるとおもしろい、楽しみだ、とインターンシップ先から期待されるくらいでないといけない。

 ・ やりがい発見について、仕事を分解すると、経済的報酬と非経済的報酬にわかれる。経済的報酬は必要条件で、非経済的報酬は十分条件である。仕事をするうえで、後者が非常にたいせつである。非経済的報酬をコミュニケーション報酬ともいうが、お金に代えられない、そこでしかえられない報酬がある。たとえば、JAF(日本自動車連盟)の整備士の仕事。車が故障して、待ち焦がれているところに駆けつけるので、「ありがとう」といってもらえる。心から感謝される「ありがとう」ということばが仕事の励みになる。

・ キャリア教育に携わるスタッフのポリシーとして、学生と接するときは、いつもニコニコと笑顔で対応したい。学生に愛しているよというメッセージを送ることがひとつ。もうひとつの理由としては、就職関係のスタッフが楽しげに仕事をしていないと、学生が就職に魅力を感じてくれないから。

第6分科会の最後は質疑応答となり、学生のキャリア教育を考えるとき、学生が「自分を知る」、「自分の考えをもつ」ことが重要であるなら、キャリア教育は、就職部やキャリアセンターを超えて、哲学や倫理学や心理学など、教養教育と密接にかかわる。この話題が話し合われ始めた段階で、時間切れとなった。次回はそのあたりまでを視野にいれたシンポジウムを企画したいので、再度の参加を期待します、ということで散会した。

この参加報告で十分ご紹介しきれなかった点は、後ほど、大学コンソーシアム京都が報告書を作成されると思いますので、ぜひご覧ください。本当にアイデア満載です。

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