FDワークショップ 教育テクノロジーと授業改善に参加して

FDワークショップ 教育テクノロジーと授業改善に参加して

2006.03.01

国際交流センター 生田 眞敏

2006年3月7日(火)に開催されたシンポジウム「学びの多様化と教育テクノロジーの効用」に先立ち3月6日に行われたワークショップ「教育テクノロジーと授業改善」に参加した。コーディネーターはシンポジウム講演者でもあるサンフランシスコ州立大学教育学部キム・フォアマン教授で、サンフランシスコ州立大学のLearning Management Systemの導入事例を交えたワークショップであった。
以下に、当日のスケジュールと共にワークショップの中で特に印象に残ったプログラムを紹介する。

10:15−12:00 シェアリング・セッション
2005年10月及び2006年1月サンフランシスコ州立大学にて行われたワークショップの内容を今回の参加者で共有した。

 ・ 大沢暁教授による「学習理論と授業設計」では、“デイルの学習ピラミッド”の考え方が印象的であった。これは、単に読み書きをする場合と比較して、実際に他人に教える行為の方が圧倒的に記憶できる割合が増大するという理論である。セッションの後半にてキム教授からも指摘されるのだが、最も効果的な学習とは“他者に教えること”なのかも知れない。
 ・ 後藤篤子FD推進センター長による「コンセプト・マッピング」は、いくつかのキー概念(コンセプト)間につながりをみつけて、有機的な関連を示すマップ(関係図)を作成するもので、すでに日本語のソフトもある。マップ内のNode(キー・タームとなるコンセプトを挿入する)数やNode間の階層構成の複雑度により、的確に学習者の理解度が把握できることを、パワーポイントを使い非常に分かりやすく説明された。
 ・ 新田誠吾教授による「デジタル・ストーリー」では実際に本学教職員が作成したストーリー2本を紹介した。「ブログとウィキ」では実際に稼動しているブログを使いトラックバック等の機能を説明した。どちらも自分自身で創造する素晴らしさ、楽しさを実感できるものであると感じた。
 ・ 奥西教授のセッションでは、写真を多用されて、研修4日目に視察されたサンフランシスコ州立大学Department of Instructional Technologiesとスタンフォード大学Wallenberg Teaching and LearningCenterを紹介された。このセッションは当ホームページに掲載されますので、そちらをご覧ください。


13:00−14:30 キム・フォアマン教授による講演
実際にサンフランシスコ州立大学で利用されているe−Learningにおける学習ツールを紹介された。ツールは大きく以下の5つのカテゴリーに分類される。代表的なソフト等を括弧内に記した。

・ Hypermedia, Multimedia(Macromedia's Flash)
・ Web development(Microsoft Front Page, Adobe GoLive)
・ Groupware (Wikis, Blogs)
・ Video Conferencing(Centra, Macromedia's Breeze)
・ Learning Management System(Moodle, Sakai, Blackboard)

キム教授はこれらのツールを使い、出席をはじめレポートの進捗状況や授業内容の理解度を把握されているとのことである。実際にインターネット画面でリアルタイムに受講生の宿題の提出状況を見せていただいた。アメリカでは社会人の学生も多く、インターネットを利用することにより、時間割という時間の制約から自由になることは、非常に有効な学習サービスの提供であると感じた。

ただし、遠隔授業等に頼るのではなく、Blended Learningという形で、face to faceの学習機会と併用する方が一層の学習効果をもたらすことを強調されていた。

15:00−17:00 e-Learningについて(本学の取り組み他)
本学での遠隔授業等の状況が情報メディア教育研究センターから報告された。
現在、本学は米国(カリフォルニア)と韓国(ソウル)との間で遠隔授業を行っており、授業内容は受講生に対してオンデマンドで配信されている。海外との電子情報の交換とはいえ、画像や音声の送受信はスムーズであり、実際の授業風景は想像したより違和感が無かった。

また、後半では実際に動画作成ソフトを使い、教材作成のデモンストレーションも行われた。出来上がった教材を見るとその作成が難しそうに感じられるものも、実際に作成のプロセスを見ると以外に容易に作成できることが分かる。

終わりに
現在、FDを語る上でIT技術は欠かすことが出来ない。既にFD先進国のアメリカでは優れたソフトウェアが日常的に利用されている。法政大学でも2006年度からNet2006と称した教育インフラが整備されることとなった。ただし、キム教授も強調されていたように、授業にどのようなIT技術を導入しようとも、より高い学習効果を期待するならば、対面式授業等の従来型学習と上手にブレンドをすることが重要であると感じた。


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