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市ヶ谷リベラルアーツセンター長ごあいさつ

「実践知」を養うリベラルアーツ

今年2017年度、私達は教養教育の新カリキュラムをスタートさせることになりました。総称の「市ヶ谷基礎科目」を「ILAC(市ヶ谷リベラルアーツセンター)科目」と改称し、今まで単層構造だった基礎科目群を「基盤科目」「リベラルアーツ科目」と二層に分け、「総合科目」とあわせて、わかりやすく体系化された枠組に組み直しました。

建築に喩えると、まるごとの建て替え・新築というより、既存の資源を最大限生かしたリニューアルであり、もともと持っている資源を、より魅力的に見えるよう組み替えようというのが改革の趣旨でした。旧来の「基礎科目」の名称では、各学部の専門教育課程に進むための基礎的なスキルや技能を習得する下位構造であるかのように、一面的に理解されがちでした。これを解消し、教養科目は専門科目と両輪になり、対等の相互関係で4年間学ぶべきものであることを示したい。―このためには、専門科目と同様に、段階性を明示する体系化が求められました。

さて、リベラルアーツという言葉の西洋における歴史、由来を調べると、今日でもそのまま通用する、真に実用的な意義を持っていることがわかります。Liberalには、人間らしい「自由な市民」になりたいという希求がこめられ、artsは今日的な芸術のみならず、広く「技芸、技能」を指しました。他者に(奴隷的に)拘束されず、「自由な市民」として生きるために身につけるべき技能、というのが語源です。こう書くと、やはり「基礎的なスキル、技能」ではないかと思われるかもしれませんが、中世以降の欧州の大学で整えられていった「自由七科」という科目は、実に幅広い内容を含んでいました。一つの専門分野を深く学ぶためには、一見その分野とは縁遠いような他分野の教養も必要である―この考え方にこそ、現代も古びない人類の叡智が表れていると思います。

一つの専門に精通するだけでは、世界のどこでも通用して活躍できる人材にはなれません。最近は「蛸壺(たこつぼ)型」といって、自分の専門のことしか知らない(他を見ようとしない)視野の狭さが、世界でグローバル化・多様化が進めば進むほど、諸課題の様々な現実に直面した時に、役に立たないと見られるようになってきました。そこで例えば「T字型」の人材が望ましい、とよく言われます。Tの字の縦棒は専門性を表し(これだけだとタコツボ)、横棒が、広い視野のなかでその専門を活かす、「現場」に即して柔軟に応用する、あるいは他分野の人々と協働で持ち味を発揮してゆく、等々の対応力のもとになる幅広い教養を意味します。これが「リベラルアーツ」です。専門教育で得たものを生きた「実践知」にするために鍵になるのが、ILAC科目群なのです。

市ヶ谷リベラルアーツセンター長 人間環境学部教授 梶 裕史
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